★ラッスス「ペテロの涙」

ラッスス(フランドル1532-1594)は、パレストリーナとともにルネッサンス・ポリフォニーの完成者といわれる人である。宗教的連作マドリガーレ「ペテロの涙」は、ラッススの「白鳥の歌」である。以前(78)で下記のように「詩の比重が大変大きい」と書いた。たしかに、「主が彼(ペテロ)を見られる見られたときの眼は、弓となり、まなざしは矢となり、心臓はもちろん、魂までつらぬきひどく傷つけた」といった件は、ペテロの悔悛は極限まで至る。しかし、詩を気にすることなく曲だけ聴いていて、次々続く20曲が、こんこんと湧き出る泉のように音楽を聴く喜びが途絶えないことに驚く。

「ペテロの涙」は、すばらしい曲であるが、詩の比重が大変大きい。タンスイッロという人の詩であるが、イエスの予告どおり主を裏切ったペテロの苦しみ、果てしない痛みが、どこまでもペテロの心を突き刺してゆく。「死への恐れのために私は生を拒んだ」「まことの命を拒んだ私はもう生きている理由はない」と。この曲は、重唱とリコーダ中心のアンサンブルが一体となって素晴らしい雰囲気を作り出している。

"★ラッスス「ペテロの涙」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント